君の左手
『これ……お母さんから』


くしゃくしゃにされた封筒には
“アユミへ”と書かれていた


封を開く手が躊躇して震えている

短文だったけど……







この中にお母さんの今の全てが詰め込まれていた気がした…―






「…読むよ?」


葵が手紙を読み始める



少し見えた文章に……また涙が零れ落ちた








”お父さんを頼むね。

ごめんね、アユミ“











お母さんの最後の言葉はたったのニ行だけ。


泣きながら書いたのか、涙の跡が染み込んでデコボコしてるよ







お母さん…―








アユミ……皆で一緒に暮らしたいよ。



もう無理なのかな?


アユミの我が儘なのかな?
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