君の左手
握りしめたせいでクシャクシャになった手紙



読み終えた後、葵は綺麗に伸ばして閉まってくれた





「ちゃんとおばちゃんと話した?

…アユミの気持ち伝えないとダメだよ?」






そっと手を重ね、ポケットに封筒をしまう






葵が居てくれなかったら一人だったよ。



こんな孤独な夜……耐えられない







『…贅沢な……事?

家族皆で居たいって思うの……』





止まる事を知らない涙は、後から後から落ちてきて

アイツが貸してくれた上着に丸い染みが出来ている





「…アユミ、今日は遅いから家泊まりな!

久しぶりに一緒に寝よう♪」




葵に肩を抱き抱えられて公園の出口へ向かう



自転車の後ろに座ると冷たい風が涙を乾かしていった






『……ありがと』






聞こえない位小さい声で葵の背中に呟いた






しがみついた温もりが…―









昔から変わらない温かさだった。
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