僕等がみた空の色
第12楽章 廻る記憶。
『ごめん、ごめんね…六花……!』
そう言って強くあたしを抱きしめていたのはママだった。
違和感を感じたのは、ママの声が聞き慣れたものより少し若かったから。
視界の端にちらつく黒い髪も、染めた人工的なものでなく、天然の艶やかな輝きがあった。
そしてやっと理解した。
これは、あのときの悪い夢だ。
自分の小さい手と背丈。
あの日のあたし。
全ての色が失われたときの。
やだ。
もうやだ。
あたしを苦しめないで。
ママだって、嫌でしょ?
もう泣かないでよ。
その度に
あたしを責めてるの?
――…離して……っ!!
声にならない叫びを原動力にして、この歳にしては強い力でママを突き飛ばした。
……つもりだった。