僕等がみた空の色
ようやく着替え始めたあたしは、それにしても、と再度ため息をつく。
雪が降るなんて、憂鬱。
いや、憂鬱なんてもんじゃない。
起こりうる事態を想像しただけで、気分が悪くなる。
天気予報は当てにならない、て、笑い飛ばせればいいのに。
あたしは制服のボタンを留める手を休めずにつぶやく。
学校を休めば良いのだが、今日は終業式だ。
大量に配布されるであろう書類などを持ち帰らなければならないし、余計な心配をかけさせたくない友人もいる。
明日から冬休み、今日だけ我慢。
早く学校は終わるから、それまで空は持ちこたえてくれるだろうか。
雪なんか嫌いだ。
自分の名前も……自分も、全部。
ふと、遠くを見つめる。
また、カーテンの隙間から。
この時期、カーテンはあまり開けない。
だって、見たくないものが見えてしまうから。
「六花(りっか)、遅刻するわよ!」
階下からママの声が響く。
時計を確認して、すでにこんなにも時間が経っていたのかと少し驚く。
ママが反応がないあたしの名前をもう一度呼ぶ。
「分かってる!」
そう返事を返し、いまだはけてない靴下とブレザーをわしづかみにし、ケータイを鞄に入れたことを確認して急いで階段をおりる。