僕等がみた空の色
拳をにぎりしめる。
爪が食い込むから、痛くて涙が滲んだ。
それだけ。
手の平が痛いから。
ただ、それだけ。
「……分かってる。ほんとは、笑っていたら、アオも安心できるって。」
噛み締めた唇から、かすかに血の味がした。
「でも、そしたら!アオのこと忘れちゃう!あたしが楽しくても、アオは置いてくの!?」
そんなの、あたしが嫌だ。
「だから、全部を拒んで、アオを忘れないように、思い出せるように、いろんなものと一緒に閉じ込めた!」
人間の『忘れる』という便利な機能。
「怖いの……!あたしの中のアオが、消えていくこと!」
「消えないよ。」
いつのまにか、あたしの側まで来ていた藍は、握った拳を手にとると、優しく開かせた。