僕等がみた空の色
第14楽章 前進あるのみ。
「空気、ちゃんと読めてるなぁ−…。」
誰かさんと違って。
きっと、今頃入学式の真っ最中かな。
先生も生徒もみーんな体育館に集まっているものだから、学校の中うろちょろしたって簡単には見つからない。
―――あの日から数ヶ月…。
なんともちょうどよい季節に満開に咲いた、中庭にある桜の木を見上げて、春になったのだと再確認する。
二年生になった。
そうは言っても、英語科であるあたしたちのクラスはひとつしかないからクラス替えがない。
風に吹かれて靡く長い髪をそのままに、目を閉じて花びらをその身体にうける。
いろいろ、あったなぁ。
あれから、ほぼ毎日二人で塔に行ってくだらないことをしている。
藍がバイオリンを弾くから、適当に歌ってみたり、あたしもたまにピアノを弾く。
だいたいが即興だ。
ピアノも、全く大丈夫なわけではない。
まだ、胸の奥が疼くことがある。
消え損なった火種のように、小さく、かつ執拗に燻る。
それは、3年という長い年月の間囚われ続けた代償かもしれない。