僕等がみた空の色
「え、そんなの、いいの?」
「うちには優秀な部下がいるから。それともなに?六花は俺と過ごすのが嫌?」
途端に哀しそうに眉を下げて言うから、慌てて言った。
「そうじゃないよ!仕事、だいじょうぶなのかなって…」
すると、彼は今までのおちゃらけが嘘みたいに優しく微笑んだ。
「大丈夫だよ。今日くらい、お前といたっていいだろ?」
そう言ってあたしの頭を大きな手で撫でる。
出会ったときからのクセ。
安心させようとするとき、いつもこうやってくれてた。
あたしが高校生のときは髪がぐしゃぐしゃになるくらい撫で回してたことを思うと、この人も大人になったのだと妙に実感する。
「六花も、今日はもうレッスンないんだろ?」
その言葉に頷く。
「明日、コンサートだから早めに切り上げたの」
クリスマスなのに、と付け加えるが、本当はそっちのが何も考えなくてすむから実は安心しているのだ。