冷たい男



そこらへん狡いと思うんだ。



アイツはさ、モテるから知ってるんだよね。予防線のはりかた。



なのに最後の最後で冷たくなれないの。



私が泣いた時にアイツは言った。



”泣きたければ泣けばいい。涙枯れるくらい泣けよ。”



って、そういうのが狡いんだ。人としてはいいやつだよ。でも、私には辛いよ。



アイツは知ってた私が好意をよせていること。ていうかあんた周りに言ってたもんね。私知ってたんだよ。



お互い知ってたくせに知らないフリしてたよね。



私にとってさ、アイツは手の届きそうで届かない相手だった。



それで…よかったんだよ。



届かないままがよかった。



そうすればこんな辛くなかった。



いまさらだけど。



わかっているけれど。



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