ピアノ×歌
目頭が熱い。
どこでもいいんだ。
ここじゃない、どこかに行きたい。
11。
私がこの部屋に滞在した年の数。
私は12を迎えない。
ドアの取っ手を久しぶりに握った。
くるりと回す。
「あの、…」
「君に用は無いんだ。父は?」
「今は、会社に。夕食までは帰りますが。」
お手伝いはまるで私を
モンスターの様に見、おどおどしていた。
私は椅子に腰かけ、最近の雑誌に目を通す。
お手伝いさん、君は悪くない。
裸の王様だってあの子供が言わなければ物語が成立しないんだ。
心の中でそう呟いてから私は初めて
雑誌を見た。
「仕事は…?」
「今日は休みだ。」