Devil†Story
ドアを出るとそこには黒いふちの眼鏡をかけた刹那が居た。矯正の為ではなく俗いうおしゃれ眼鏡だ。


「おはよう。いつもながら呼んだら早いね〜」



「たまたま起きててな。いつもならこの時間に叩き起こしやがったらぶっ殺すところだ」


「お〜怖い怖い。そんな怖い顔しないでおくれよ」


「君の大好きな仕事だぞ⭐︎」と笑う刹那に若干…いや、かなり殺意を覚えたがだらだらと無駄話をするつもりはない。



「…で?なんの仕事だよ」


腕組みをし苛立ちを抑えるように貧乏ゆすりをすると流石の刹那もそれ以上会話を引き延ばすことはせずに要件を話し始める。


「さっすが!話が早いね。……最近嫌な動きを見せてる団体が居るんだ」



「…嫌な?」



さっきまでの笑顔は消えシリアスな雰囲気が漂った。余計な話をされないことに越したことはない。さっさと概要を聞いてしまおう。


「うん。最近出来た宗教団体で彼等には『癒し』の力があると評判らしい。例えば…『蘇生』とかね」


「蘇生…ね。よくある馬鹿な話じゃねぇか。その宗教団体が何してきたんだ。勧誘がしつこいとかか?」


「いや〜直接は関わりなかったんだけどさ。裏の仕事の依頼で同業者とかから「優秀な捜査員が宗教にどっぷり浸かって辞めていく。もしくは戦闘力が高い捜査員が根こそぎ引き抜かれてて困ってる」って身辺調査の依頼が来たからその時に何人か『裏の従業員』を派遣したんだけど、その優秀な『従業員』も何人か消されたんだよねぇ…。コレって普通じゃなくない?」


人差し指を立てて尋ねる刹那にクロムは黙っていたが納得していた。裏の従業員はカフェの従業員とは別に刹那が抱えているスパイ集団で、何処から集めているのかは不明だが15歳くらいの子どもから大人まで年齢は幅広く揃っている。主に身辺調査の担当で分かりやすく言うと探偵のような役割だ。


「確かにここの従業員がそうも簡単に消されるのはおかしいな」


その探偵の役割である従業員はもちろん危険を伴うことも多い。ある程度は護身術を叩き込んでいるので、一般人に位は簡単に太刀打ち出来る筈だった。その従業員が消されているのは相手が「一般人」ではないことを物語っている。

「だろ?手塩をかけて教育したんだから」


「まぁ普通の奴らではないな。だがその手塩にかけたとやらは1人残らず帰ってきてないのか?」


「いや、全員ではないんだけどさ」


歯切れの悪い言い方に疑問を覚えるが言葉をそのまま続けた。


「じゃあそいつらに聞けばいいじゃねぇか」


俺がそう言うと刹那は盛大な溜息をついて「それが出来てたら苦労しないよ」と頬杖をついた。

「戻ってきた子達は持ち物は全部盗られててその時の記憶も曖昧…というか薬漬けにされてて訳わかんなくなってる状態。「神父様バンザイ」とか言ってて怖いったらありゃしないよ。そんな状態でも戻ってきてるのは、たまたま警備がガバってる時に外に出られて意識がハッキリしないから帰巣本能で帰ってきてるだけって感じ」


「とりあえず薬抜けるまでは療養してるけどいつになるか分からないしさ」と大袈裟にため息をつきながら自分の指輪見て答える。


「なるほどな。ラリってんなら話せる状態じゃねぇな」


「そういうこと。依頼内容とうちの従業員で共通してるのは「戻ってきた子たちは持ってた持ち物は全て盗られてる」「とりわけ戦闘力がある子は戻ってきてない」ってことだけ。他にも仕事はあるからそこにばかりその子達を送るわけにもいかないからさ」


「だから俺に調べてきて欲しいと?」


「その通り♪」


何処か楽しげに言っている刹那とは裏腹にが、面倒な仕事を頼まれたとうんざりした。
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