Devil†Story
ーーそれから時間が経ち夕暮れ時。


麗弥はぼーっとベランダから外を眺めていた。


姉さんは帰り、稀琉は怪我をしているからと部屋に戻って行った。


…本当に自分を心配してくれていた2人には感謝してもし切れないな。


麗「………」


ここ数時間の出来事が頭の中を駆け巡る。


…ほんまこの数時間で色々な事があったなぁ…。



友達を裏切って、姉さんに俺がしてる事がバレて…挙句家族の仇のあの男をやっと見つけたのに殺して……。まるで小説を読んでいたかのように次々と起こった出来事に胸が痛むのを感じた。


……俺は結局同じように…あいつを殺してしまったんやな…。


醜鬼に成り果てたあの男の最後は…死ぬ時まで鮮明に覚えているだろう。あの引き金を引く感覚も憎くてたまらなかったあの顔に穴が開いて血が吹き出した事…冷たくなったあいつの姿をこの先どんなことがあっても絶対に忘れないだろう。


…ハハッ。また父さんたちに顔向け出来なくなったな。


そう皮肉になり自嘲したように笑って首を横に振った時だった。


ーードサッ


麗「?」


部屋の方から音がして反射的に振り返るとベランダから流れて込んだ風のせいか本が床に落ちていた。ベランダの手すりから離れて本を拾いにいく。


麗「あ……」


落ちていた本を見て拾おうとした手が止まった。その本は"俺の美しいウォーターブルー"であった。明るい青と白…まるで夏の空のような色合いの表紙。自分が何処か望んでいた青春と平和な日常が描かれているその物語。変にポジティブな主人公と友人から言われた言葉を思い返して再び乾いた笑みをこぼす。


麗「……お前と俺が似てるなんて…あるわけないよな」


本の中の主人公に語りかけるように消えるような声で呟いた時であった。


ーーザアァァ


夏には珍しい突風が部屋の中を突き抜けていった。パラパラパラと本のページが次々とめくれていき…やがて止まった。


麗「!!」


そのページを見て思わず目を見開いた。偶然風が見せてくれたその青いページにはこう書かれていたからだ。


"まっいいや。変だと思われても。だって俺は俺だけの色で生きてるから。おい!聞いてるか?俺の美しいウォーターブルーよ!"


最後だけ元のような書き方にされていた迷作と言われたそのページ。それを見てまるでその本に見透かされたような気分になった。


しばらくそのページを見ていた麗弥だったが今度はさっきとは違う明るさが入っている笑みを浮かべた。


麗「…せやな。やっぱり前言撤回。お前と俺は俺の友達が言うた通り似とるわ」


本を拾い上げて背伸びをしつつ再び外を見るとそこには青と橙色に光り輝く夕焼けが空をキャンパスに混ざり合っていた。


麗「俺も俺のカラーで足掻きながら進んで行きますかー」


そう言う麗弥の表情は何処か晴れやかであった。様々な色が混じり合った空を見て大好きなその本の1ページ目と指を滑らせた。
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