Devil†Story
「ク…クロムまで!もうビックリしたぁ…」
稀琉は胸を押さえながら深呼吸する。刹那に関しては「どうして君達はそんなに気配ないの…。もう今日だけで寿命が数年縮まった…」と大きな声すら出ない様子だ。
「なんだよ。起きて部屋見たらロスが居ねぇから探しに来たんだよ。軽くノックしたぞ」
欠伸をしながら首元をガリガリと掻いた。本当に今さっき起きたみたいで目が充血している。恐らくノックはしたのだろうが本人が言うように本当に「軽く」し、ほぼ同時に中に入ってきて3人の会話を聞いだろう。
「…本当にノックした?」
「した」
疑いの目を向ける稀琉にさらりと答える。あまりにスピーディーなやり取りに聞き逃したと思った稀琉は「…本当だよね?」「本当だ」と同じような質問をし、同じようなやりとりが再度されることとなった。
「んなことよりもロス。馬鹿な事言ってんじゃねぇぞ」
腕を組みながら睨みつけたクロムは悪態をついた。殴られたロスは頭を抑えながら椅子から立ち上がった。
「いってぇな!お前寝起きは加減できねぇんだから叩くな!」
確かにツッコミで叩いたとしても、そうとは思えない程強く叩いた音がした。それは視覚的にも感じることが出来た。側から見ても思い切りやったのは明白である。
「お前が馬鹿なこと言わなきゃ殴ってねぇよ」
イライラしたように今度は頭をガシガシと掻く。そんなクロムに対してまだ頭が痛むのか頭を抑えながらロスもイラつきを露わにした。
「本当の事だっての!寝てるから分からねぇだろうけどマジだからな!動きが猫っぽい時があんだよ!…いやナマケモノか?」
ふふんと小馬鹿にしたような問いかけに「ハァ?」と更にイラついた様子のクロムはロスを見ながら言い返す。
「してねぇって言ってんだろ!寝てるとこ見てんじゃねぇよ。気持ち悪ぃな!そういうお前だってよく猫に話しかけたりしてんだろ!」
「なっ…お前いつ見た!?」
先程までの余裕は何処へやら。見られていないと思っていたのだろう。ロスは狼狽えたように僅かに後ろに下がった。
「さぁな。話しかけてる時の語尾が猫語なのと特に柔らかな毛並みの白い猫がお気に入りって事しか知らねぇーー「あー!しっかり見てやがる!余計な事言うな!黙れって!」
羞恥心に顔を赤くしながらもしっかり言い返すロスに「てめぇこそ余計な事を喋ってただろうが!」と互いにまるでヤンキーの様に詰め寄って睨み合った。
元々2人は目が赤いので中々迫力があるが今のクロムは更に白目の所まで充血して真っ赤だ。尚更、迫力がある。今にも喧嘩を始めそうな雰囲気に慌てて稀琉が間に入る。
「ちょっと2人共止めなよ〜!ナマケモノもあるかもしれないけどどっちも猫でいいじゃない!可愛いし」
「「よくねぇ!」」
的外れなことを言う稀琉に息ピッタリで2人は言い返した。
「あざーす!」
「………」
それぞれティーカップと紙コップを受け取った。互いに引けなくなってきた2人の様子を見て刹那が紅茶を淹れたのだ。案の定、一時的かもしれないが黙って紅茶を飲み始めた。あまり飲食している2人を見たことがなかったので稀琉は2人の様子を観察していた。
観察している内に2人は対照的だと感じた。まず飲み方。通常より冷ます仕草をするクロムに対してロスは冷ます仕草はせずそのまま飲んでいる。それだけではなく、砂糖の量も大量投入のクロムと無糖のロス。そんなロスに「ロスは無糖派なんだね!冷ましてないけど熱くないの?」と尋ねると「俺は大人だからねー。誰かさんと違って。紅茶って香りを楽しむんだろ?寧ろ熱々で飲むのがいいんじゃん」とチラリとクロムを見ながら若干小馬鹿にしたように言う。「…あ?」と再び喧嘩になりそうな雰囲気に稀琉は慌てて今度はクロムに質問をする。
「クロムは熱過ぎるの苦手?オレもそうだから気持ちわかるなー!砂糖凄く入れてたけど甘過ぎないの?」
猫舌と言う言葉は敢えて控えた稀琉。猫というワードに再燃してしまう可能性があったからだ。少しの間、見ていない振りをしていたロスを睨んでいたクロムだが稀琉の問いに「…別に。丁度いいくらいだ」と再度冷ましてから紙コップに口をつけた。
「そういえばなんでクロムだけ紙コップなの?」
談話室には食器棚があって刹那によって専用のコップが用意されていたはずだった。それが証拠に稀琉とロスはそれぞれイエローとブラックカラーのティーカップで飲んでいた。しかし何故かクロムだけ紙コップで貰っていた。
「こないだ麗弥がクロムのティーカップ壊しちゃってねぇ…。だから紙コップなんだよね」
クロムの代わりに刹那が答えた。どうやらクロムも知っていたようで「…あいつ今度会ったらしめる」とボソリと呟いた。
「もう麗弥ったら何やってるだろ。…でも代わりのコップあるよね?」
ズラリとティーカップが並べられている食器棚を見ながら不思議そうに聞く稀琉に今度はクロムが面倒そうに答える。
「人が使ったコップなんか使えるかよ」
「洗ってあるよ?」
「無理。汚ねぇ」
即答されるがいまだに意味が理解しきれていない稀琉に刹那が「クロムはほら…潔癖症なところあるから。洗ってあろうがなかろうが人が使用した物は嫌なんだよ」と補足を入れた。その刹那の補足に驚いたように質問を続ける。
「え!?クロムは綺麗好きなのはなんとなく分かってたけどそこまでなの!?洗う時のスポンジとかは皆一緒だと思うけど…それでもダメなの?」
何気なく聞いた稀琉だったが「飲んでる時に汚ねぇ話すんなよ」と嫌そうな顔をした。どうやら"洗う時の〜"からの発言を言ってるようでクロムからすれば
人のコップを洗ったスポンジのことは汚い話だったようだ。しかしすぐに何かに気付いた表情になり充血した目を刹那に向けた。
「刹那…お前まさか前みたいに面倒だからって他人が使ったやつと一緒に洗ってねぇだろうな?」
睨むような目つきに刹那は慌てて「ちょっとやめてよ!きちんと"クロム専用"の食器洗い機でしか洗ってないよ!稀琉が知らないだけ!」と弁明してきた。専用の食器洗い機がある事に驚きを隠せない稀琉にロスが声を掛ける。
「キッチンの奥に絶対に触らないでねって書いてある機械あるだろ?アレだよ」
「…あぁ!アレね!アレはクロム専用だったんだね!ずっと不思議だったんだよねー。使っちゃいけない食器洗い機あるの!…それにしてもそこまでダメなんだねー…」
長年の謎が解けた稀琉はスッキリしたように答えつつ、あまりの徹底振りに驚きながらクロムを見る。その間も刹那は疑いの目を向けるクロムに必死に弁明していた。以前、面倒になった刹那が自分のカップと一緒にクロムのカップを洗おうとしたことがあった。その時にクロムに見つかってしまいかなり怒られたことがあったのだ。キッチンにあるものの大半を壊され、それ以降絶対に他の人と一緒にクロムの食器を洗わないことを肝に銘じていた。クロムの潔癖症の重症さを考えると刹那の必死さは妥当であった。
「…ならいいが。ったくただでさえ寝起きにロスが馬鹿なこと言いやがって疲れたのに、あの眼帯馬鹿が俺のコップ割りやがったから質問責めにあって余計な労力使わせやがって………そういやその馬鹿は珍しくいねぇのか」
必死な刹那の弁明にようやく納得しつつ、やっとさっきまでしていた本題と関係ありそうな事を聞いた。
稀琉は胸を押さえながら深呼吸する。刹那に関しては「どうして君達はそんなに気配ないの…。もう今日だけで寿命が数年縮まった…」と大きな声すら出ない様子だ。
「なんだよ。起きて部屋見たらロスが居ねぇから探しに来たんだよ。軽くノックしたぞ」
欠伸をしながら首元をガリガリと掻いた。本当に今さっき起きたみたいで目が充血している。恐らくノックはしたのだろうが本人が言うように本当に「軽く」し、ほぼ同時に中に入ってきて3人の会話を聞いだろう。
「…本当にノックした?」
「した」
疑いの目を向ける稀琉にさらりと答える。あまりにスピーディーなやり取りに聞き逃したと思った稀琉は「…本当だよね?」「本当だ」と同じような質問をし、同じようなやりとりが再度されることとなった。
「んなことよりもロス。馬鹿な事言ってんじゃねぇぞ」
腕を組みながら睨みつけたクロムは悪態をついた。殴られたロスは頭を抑えながら椅子から立ち上がった。
「いってぇな!お前寝起きは加減できねぇんだから叩くな!」
確かにツッコミで叩いたとしても、そうとは思えない程強く叩いた音がした。それは視覚的にも感じることが出来た。側から見ても思い切りやったのは明白である。
「お前が馬鹿なこと言わなきゃ殴ってねぇよ」
イライラしたように今度は頭をガシガシと掻く。そんなクロムに対してまだ頭が痛むのか頭を抑えながらロスもイラつきを露わにした。
「本当の事だっての!寝てるから分からねぇだろうけどマジだからな!動きが猫っぽい時があんだよ!…いやナマケモノか?」
ふふんと小馬鹿にしたような問いかけに「ハァ?」と更にイラついた様子のクロムはロスを見ながら言い返す。
「してねぇって言ってんだろ!寝てるとこ見てんじゃねぇよ。気持ち悪ぃな!そういうお前だってよく猫に話しかけたりしてんだろ!」
「なっ…お前いつ見た!?」
先程までの余裕は何処へやら。見られていないと思っていたのだろう。ロスは狼狽えたように僅かに後ろに下がった。
「さぁな。話しかけてる時の語尾が猫語なのと特に柔らかな毛並みの白い猫がお気に入りって事しか知らねぇーー「あー!しっかり見てやがる!余計な事言うな!黙れって!」
羞恥心に顔を赤くしながらもしっかり言い返すロスに「てめぇこそ余計な事を喋ってただろうが!」と互いにまるでヤンキーの様に詰め寄って睨み合った。
元々2人は目が赤いので中々迫力があるが今のクロムは更に白目の所まで充血して真っ赤だ。尚更、迫力がある。今にも喧嘩を始めそうな雰囲気に慌てて稀琉が間に入る。
「ちょっと2人共止めなよ〜!ナマケモノもあるかもしれないけどどっちも猫でいいじゃない!可愛いし」
「「よくねぇ!」」
的外れなことを言う稀琉に息ピッタリで2人は言い返した。
「あざーす!」
「………」
それぞれティーカップと紙コップを受け取った。互いに引けなくなってきた2人の様子を見て刹那が紅茶を淹れたのだ。案の定、一時的かもしれないが黙って紅茶を飲み始めた。あまり飲食している2人を見たことがなかったので稀琉は2人の様子を観察していた。
観察している内に2人は対照的だと感じた。まず飲み方。通常より冷ます仕草をするクロムに対してロスは冷ます仕草はせずそのまま飲んでいる。それだけではなく、砂糖の量も大量投入のクロムと無糖のロス。そんなロスに「ロスは無糖派なんだね!冷ましてないけど熱くないの?」と尋ねると「俺は大人だからねー。誰かさんと違って。紅茶って香りを楽しむんだろ?寧ろ熱々で飲むのがいいんじゃん」とチラリとクロムを見ながら若干小馬鹿にしたように言う。「…あ?」と再び喧嘩になりそうな雰囲気に稀琉は慌てて今度はクロムに質問をする。
「クロムは熱過ぎるの苦手?オレもそうだから気持ちわかるなー!砂糖凄く入れてたけど甘過ぎないの?」
猫舌と言う言葉は敢えて控えた稀琉。猫というワードに再燃してしまう可能性があったからだ。少しの間、見ていない振りをしていたロスを睨んでいたクロムだが稀琉の問いに「…別に。丁度いいくらいだ」と再度冷ましてから紙コップに口をつけた。
「そういえばなんでクロムだけ紙コップなの?」
談話室には食器棚があって刹那によって専用のコップが用意されていたはずだった。それが証拠に稀琉とロスはそれぞれイエローとブラックカラーのティーカップで飲んでいた。しかし何故かクロムだけ紙コップで貰っていた。
「こないだ麗弥がクロムのティーカップ壊しちゃってねぇ…。だから紙コップなんだよね」
クロムの代わりに刹那が答えた。どうやらクロムも知っていたようで「…あいつ今度会ったらしめる」とボソリと呟いた。
「もう麗弥ったら何やってるだろ。…でも代わりのコップあるよね?」
ズラリとティーカップが並べられている食器棚を見ながら不思議そうに聞く稀琉に今度はクロムが面倒そうに答える。
「人が使ったコップなんか使えるかよ」
「洗ってあるよ?」
「無理。汚ねぇ」
即答されるがいまだに意味が理解しきれていない稀琉に刹那が「クロムはほら…潔癖症なところあるから。洗ってあろうがなかろうが人が使用した物は嫌なんだよ」と補足を入れた。その刹那の補足に驚いたように質問を続ける。
「え!?クロムは綺麗好きなのはなんとなく分かってたけどそこまでなの!?洗う時のスポンジとかは皆一緒だと思うけど…それでもダメなの?」
何気なく聞いた稀琉だったが「飲んでる時に汚ねぇ話すんなよ」と嫌そうな顔をした。どうやら"洗う時の〜"からの発言を言ってるようでクロムからすれば
人のコップを洗ったスポンジのことは汚い話だったようだ。しかしすぐに何かに気付いた表情になり充血した目を刹那に向けた。
「刹那…お前まさか前みたいに面倒だからって他人が使ったやつと一緒に洗ってねぇだろうな?」
睨むような目つきに刹那は慌てて「ちょっとやめてよ!きちんと"クロム専用"の食器洗い機でしか洗ってないよ!稀琉が知らないだけ!」と弁明してきた。専用の食器洗い機がある事に驚きを隠せない稀琉にロスが声を掛ける。
「キッチンの奥に絶対に触らないでねって書いてある機械あるだろ?アレだよ」
「…あぁ!アレね!アレはクロム専用だったんだね!ずっと不思議だったんだよねー。使っちゃいけない食器洗い機あるの!…それにしてもそこまでダメなんだねー…」
長年の謎が解けた稀琉はスッキリしたように答えつつ、あまりの徹底振りに驚きながらクロムを見る。その間も刹那は疑いの目を向けるクロムに必死に弁明していた。以前、面倒になった刹那が自分のカップと一緒にクロムのカップを洗おうとしたことがあった。その時にクロムに見つかってしまいかなり怒られたことがあったのだ。キッチンにあるものの大半を壊され、それ以降絶対に他の人と一緒にクロムの食器を洗わないことを肝に銘じていた。クロムの潔癖症の重症さを考えると刹那の必死さは妥当であった。
「…ならいいが。ったくただでさえ寝起きにロスが馬鹿なこと言いやがって疲れたのに、あの眼帯馬鹿が俺のコップ割りやがったから質問責めにあって余計な労力使わせやがって………そういやその馬鹿は珍しくいねぇのか」
必死な刹那の弁明にようやく納得しつつ、やっとさっきまでしていた本題と関係ありそうな事を聞いた。