やくざと執事と私【第3部 上巻:ラブ&マネー】
「・・・・・・・・・・・・。」
お爺さんの動きが止まった。
「お電話は、確かにお孫さんでしたか?」
私は、お爺さんに優しく尋ねる。
「・・・・・・・・・・・・。」
止まったままのお爺さん。
「最近、いつお孫さんに会われましたか?」
質問を変える私。
「・・・・・確か、6年前くらいですかのぉ。」
思い出しながら答えるお爺さん。
すでに包丁を握っていることを忘れたかのように手をぶらぶらとさせている。
「それじゃ、電話の相手が本当にお孫さんかどうかは、わかりませんよね。」
私は、お爺さんに言った。
「いや、わしが、孫の声を間違えるはずはないですからのぉ」
お爺さんが、少し怒った様子で私に言った時、初老の警備員が、初老とは思えない動きでお爺さんの包丁を持っている手に掴みかかると、その包丁を叩き落とした。
そして、お爺さんを床に倒し、押さえつける。
「警察に連絡してください。」
初老の警備員が、銀行の窓口に向って叫ぶ。