やくざと執事と私【第3部 上巻:ラブ&マネー】
第1章:赤く燃ゆる
第1節:お金
組長の結婚騒ぎも終わり、平穏な日を取り戻したある日。
朝から、執事は、暗い顔をしていた。
「どうしたんですか、龍一さん?暗い顔をされてますけど?」
屋敷の廊下の掃除をしていた私は、偶然、通りかかった執事に話しかけた。
「あっ、小夜さん。・・・別に大したことではありませんが、そんなに暗い顔をしていましたか?」
苦笑いしながら、私を見る執事。
「はい。」
素直にうなずく私。
「・・・・そうですね。・・・小夜さんには、言ってもいいかもしれませんね。いずれ、小夜さんにもやって貰わないといけないことですし。」
少し考え込んだ後で、執事が言った。
「何をやるんですか?」
「ここでは、何ですから、ちょっと、ついて来てもらえますか、小夜さん。」
執事は、そう言うと、歩き始めた。
私は、少し不安に思いながらも、執事の後ろをついて歩いていく。