やくざと執事と私【第3部 上巻:ラブ&マネー】
「・・・知らないよ。」
あからさまに心当たりのある表情で嘘をつく真木ヒナタ。
「そんな訳ないでしょう?」
当然、誰も真木ヒナタの言葉なんか信じるわけはなく、執事が、真木ヒナタに言った。
「・・・怒る?」
珍しく不安そうな表情で執事を見つめる真木ヒナタ。
その表情を見て、私の不安は、さらに大きくなった。
どんな悪戯をしても、ほとんど謝ることをしない真木ヒナタが、不安そうな顔をするとは、いったい、どんなことを組長にしたのか。
想像するだけで、頭が痛くなる。
「・・・・怒りませんので、試しに言ってみてください。」
執事は、不安さ半分の表情で真木ヒナタを見た。
「・・・・小夜を助けるために、別の銀行に投げ捨てて来た。」
真木ヒナタの言葉に一同、意味が分からず、キョトンとした表情になる。
「・・・銀行に投げ捨ててきた?・・・いったい、どういう意味ですか、ヒナタさん?」
一同の疑問を代表して、執事が、真木ヒナタに尋ねた。
「だから、小夜を助けるために、小夜が逃げやすいように、小夜のいる銀行の周りにいる警察官を少しでも減らそうと、別の銀行でも問題を起こそうと思ってさ。」
「つまり・・・・大和に銀行強盗をさせたと・・・いう意味ですか?」
恐る恐る、真木ヒナタに尋ねる執事。