やくざと執事と私【第3部 上巻:ラブ&マネー】
第9節:銀行強盗大作戦1
「まだ、目を開けるんじゃないぞ、大和。」
ポチの運転する車の助手席に座っている真木ヒナタが、後部座席に座る組長に声を掛ける。
組長の目は、しっかりと堅く閉じられていた。
「ヒナタ、どこに行くかくらい教えてくれてもいいだろ?」
組長が、目を閉じたまま、真木ヒナタに声を掛ける。
ただ、どこに行くか知らないにも関わらず、組長の表情は、どこかにやけていた。
「何言ってるんだよ、大和。それを教えたら、面白くないだろ?」
明るい声で答える真木ヒナタ。
「・・・確かに。・・・それにしても、いったいどんなサプライズを用意してんだ?・・・俺は、ちょっとやそっとのことじゃ、驚かないぞ。」
うれしそうにつぶやく組長。
相変わらず、その表情は、にやけていた。
「まぁ、楽しみにしてろよ、大和。お前の想像以上のサプライズを提供してやるから。」
真木ヒナタも組長と同様ににやけていた。
「・・・真木さん、次の信号も真っすぐでいいんですか?」
うれしそうににやける真木ヒナタに運転をしているポチが声を掛ける。
「んっ?あっ、何やってんだよ、ポチ!一つ前の信号を右に曲がるに決まってるだろ!さっさと引きかえせよ!」
ボコッ!
真木ヒナタが、運転席のポチの頭を軽く殴った。