やくざと執事と私【第3部 上巻:ラブ&マネー】
「す、凄いですね、真木さん!スプーンひとつで脱獄したんですか?」
サブは、驚いた表情で真木ヒナタを見た。
「ああ、毎日、毎日、少しずつ壁を削っていってな。看守に見つからないように、削った場所をポスターで隠して。」
身振り手振りでサブに説明する真木ヒナタ。
サブは、そんな真木ヒナタの説明を興味深そうに真剣に眺めていた。
ゴッツーン!!!
もの凄い音と共に真木ヒナタの頭に振り下ろされる執事の鉄拳。
真木ヒナタは、叫ぶこともなしに倒れて動かなくなってしまった。
その様子を見て、青ざめるサブ。
サブには、一体なぜ執事に真木ヒナタが殴られるのかわかっていなかった。
「まったく、こんな困った状況でもふざけるなんて・・・こまった人です。」
悲しそうにつぶやく執事。
「えっ?ふざけるって・・・・もしかして、今の話、嘘なんですか?」
ようやく何故、真木ヒナタが、執事に殴られたかわかって、執事に尋ねるサブ。
「そうですよ。ヒナタさんは、今まで一度も刑務所に入ったことはありませんよ・・・・入るような事は、数え切れない程してますけど。」
サブに答える執事。
「だったら、今の真木さんの話は・・・?」
「あれは、映画の話ですよ。ショーシャンクの空にという有名な映画です。・・・まさか、あの素晴らしい映画をこんなところでふざけて持ち出すとは・・・。」
悲しそうに首を横に振りながら、執事は言った。