やくざと執事と私【第3部 上巻:ラブ&マネー】
「・・・・まったく。ふぅ・・・。」
執事が、困ったような表情でつぶやいた。
「・・・大丈夫ですか、小夜さん?」
辛さに苦しむ私に近づいてきて、真木ヒナタの口を開かした方法とは違い、優しく私の顎に手を当てると、少し、私の顔を上に上げる。
そして、私の口の中を見るために、私の口元に執事の顔を近づけた。
一気に真っ赤に染まる私の顔。
熟したトマトのようになった。
特に、久しぶりの執事の手の暖かさに、私の心臓は、今にも破裂しそうなほど、バクバクしている。
「・・・口の中は、大丈夫そうですが・・・まだ、痛いですか?」
執事は、じっくりと私の口の中を観察した後で、私に尋ねてきた。
「だいびょーぶべず。」
まだ、うまく舌を動かせない私は、ジェスチャーで執事に大丈夫だという意思を伝えた。
「そうですか。ちょっと待っていてください。」
執事は、私のジェスチャーに少し安心したような表情になり、そして、部屋を出て行った。
戻ってきた執事の手には、冷たい水の入ったコップが握られていた。