やくざと執事と私【第3部 上巻:ラブ&マネー】
「・・・・俺の紅茶は?」
執事の目の前にいる組長は、羨ましそうに、執事が恍惚の表情ですするカップへと視線を注いでいた。
「これは、これは、大和も紅茶が欲しかったのですか?」
組長が、わざとらしく、驚いたような表情で組長を見た。
そして、執事の視線を受けた組長は、何度も首を縦にうなずいた。
「まだ、少しのどが痛い。」
組長は、すでに真木ヒナタ特製の唐辛子の辛味成分抽出液の辛さを消すために、水を5杯飲んでいた。
組長の目の前の机の上には、それを示す空のコップ5個が、無造作に置かれていた。
「まだ、辛さがとれませんか?」
執事は、心配そうな表情で組長を見た。
「・・・・龍一、俺のことなんか心配してくれるのか?」
執事の表情に少しうれしそうに組長が、笑顔を見せた。
「当たり前じゃないですか、大和。」
優しい笑顔でうなずく執事。
その執事の表情は、壁際で立って2人の様子を見ていた私も、うっとりするような笑顔だった。