やくざと執事と私【第3部 上巻:ラブ&マネー】
女性は、その組長の表情を見て、すぐにイスから立ち上がり、ドアへ向って歩き出す。
しかし、ドアの目の前に来て、女性の足が止まる。
「・・・しばらく静かにしておきなさい。私がこんな極東の島国にまで来たということは、組織も本気で怒っているということ。少しでも怪しい動きをしたら、本当に消されるわよ。」
「・・・お前が本気の忠告なんて、何が望みだ?」
組長がいぶかしげな表情で女性の後ろ姿に尋ねた。
「・・・別に何も。・・・・ただ、私、意外とゲテモノ好きなのよ。」
女性は、少し振り返り、一瞬だけ、妖艶な笑みを浮かべ、そして、部屋を出て行った。
女性と男性2人が出て行って、しばらく、部屋の中で誰も口をひらかなかった。
いや、ひらけなかった。
まるで体中を虫が這いずるような不快感に襲われていた。