やくざと執事と私【第3部 上巻:ラブ&マネー】
第19節:署長
「はいるぞ~。」
変な意味で重苦しい雰囲気に包まれた取調室に加藤刑事が入ってきた。
「話し合いは終わったか?」
加藤刑事は、先ほどまで女性が座っていたイスに入ってすぐに腰を下ろした。
「いえ、申し訳ありません。途中で邪魔が入りましたので。」
執事が、苦笑いを浮かべながら、申し訳なさそうに加藤刑事を見た。
「邪魔?ああ、今の奴らか。」
「はい。・・・加藤さんは、今のが誰か知ってらっしゃるんですか?」
ふと、何か思いついたような表情で執事が尋ねた。
「ロシアの外交官だろ。俺は知らんが、署長に上から連絡があって、訪ねて来たらしいが・・・。知り合いじゃなかったのか?向こうは知り合いだから会わせてくれっていってたぞ?」
「・・・まぁ、知り合いといえば、知り合いです。」
執事は、言葉を濁しながら答えた。
「もしかして、まずかったか?」
「いえ、逆に警察署内で尋ねて来てくれて助かりました。外で会っていたら、どうなっていたか。」
「・・・・・やっぱり、裏の人間だったか。」
納得したような表情の加藤刑事。