やくざと執事と私【第3部 上巻:ラブ&マネー】
「・・・・裏というより・・・闇に住んでいる人間です。」
「闇?」
「はい。裏のように表の住人に気を使う事もなければ、最低限のルールもありません。すべて自分達の都合で動いてますので、加藤さんも下手な刺激はされない方が懸命ですよ。・・・彼らにとって、人間1人の命など、ゴミくずと一緒です。」
「・・・一応、俺は、警察官なんだがな。」
執事の言葉に苦笑いを浮かべる加藤刑事。
「警察官という言葉が意味を持つのは、裏の人間に対してまでですよ。・・・闇の人間には、相手が警察官であろうが、何の意味もありません。そもそも、相手が、外交官の名称で日本に来ているのであれば、外交官特権で警察官には、何もできませんよね?」
「・・・・外交官でないものが、外交官として日本に入れる力のある闇の組織の一員ということか・・・。」
加藤刑事は、執事の言葉に納得した表情になった。
「ちょっと違います。外交官でないものを外交官にする力のある闇の組織です。」
「・・・・・・・なるほど、要するにロシアが知らずに勝手に外交官を名乗って違法に日本に来たわけではなく、ロシアが認知した上で、日本に来ているというわけか。」
「・・・・残念ながら、そういうことです。」
「確かに、それは、日本のいち警察官には、手に余る事案だな。」
加藤刑事は、右手で頭をかいた。
その表情は、どこか苦々しげだった。
「ところで、大和の扱いは、どうなるのでしょうか?」
「・・・・それは・・・。」
加藤刑事が、何か言いかけたところでドアがいきなり開いた。
そして、急に開いたドアから、男が一人入ってきた。