やくざと執事と私【第3部 上巻:ラブ&マネー】
男は、身長180cmぐらいで、スマートな体格をしていて、髪は、上品でオシャレな感じで短く刈り込まれており、顔は二重の切れ長の目をしていて、全体的にバランスのとれた顔をしているが、切れ長の目のせいかどこか冷たさを感じさせた。
「それは、私から説明しよう。」
男は、視線を執事一人にロックオンしたままで、話し始めた。
「署長・・・。」
加藤刑事は、すぐにイスから立ち上がり、席を入ってきたばかりの署長に譲ろうとするが、署長は、イスには座らなかった。
「この度は、ご迷惑をお掛けしております。」
執事は、微笑を浮かべて署長に頭を下げる。
そんな執事の様子を署長も微笑みを浮かべたままの表情で見ながら、よく訓練された一定の足どりで、イスに座る組長の後ろに立っている執事のもとに近づいてきた。
そして、執事のすぐ横に立つと、ゆっくりと執事の肩に腕をまわし、執事の耳に署長の顔を近づける。
「そんな他人行儀な言い回し。私は、悲しいよ、龍一。」
この上なく甘ったるい声で執事に囁きかける署長。
その様子を見ていた私の全身に、一瞬で鳥肌が立った。
イスに座る組長を見ると、ブルブルと震えているのが見てとれた。
執事はというと、特に気にする様子もなく、いつも通りの微笑で署長に対応していた。
「それで、大和の扱いは、どうなるのでしょう?」
「・・・・久しぶりに会えたというのに、そんなに話を急ぐ事もないだろう、龍一?私は、てっきり、最初に私に会いに来てくれるものと思っていたのに、いつまで待っても、全然会いに署長室に来てくれない。・・・・寂しくて、私の心は、引き裂かれそうだったよ・・・。」
署長は、大げさな手振りと表情をつけて話している。
その様子は、まるでミュージカルを見ているようだった。