やくざと執事と私【第3部 上巻:ラブ&マネー】
「・・・帰ってもいいのですか?」
執事が、署長に尋ねた。
「君が帰るのは残念だが、こちらにも都合があって、今回の件は、不問ということになった。」
組長に話す口調とはまるで違い、優しい口調で執事に話しかける署長。
「・・・・なぜ・・・ですか?」
「・・・まぁ、それは、こちらが聞きたいのだが、ロシアからの強力な圧力があったらしい。」
「大和の逮捕についてですか?」
「そうだ。すぐに釈放しろとな・・・・どういうコネがあるのか、こちらが聞きたいくらいだ。」
不服そうな署長。
「コネ・・・はないはずですが?」
執事も珍しく不思議そうな表情になっていた。
「俺、帰っていいの?」
組長が、うれしさを抑えているような表情で周辺を見回す。
組長の視線を受けて、執事と私は、ゆっくりとうなずいた。
「やったぁぁぁ~!俺様、取調室ブレイク成功~!」
イスから飛び上がり、万歳をする組長。
「よかったですね、組長。」
私は、無罪放免の仕方にやや不安を感じてはいたが、お咎めなしで終わるという事に少し安心していた。
「ありがとう、小夜。これも、すべて小夜・・・・のおかげではないな。」
「・・・・・確かにそうですけど、こういう時にそういうこと言います?」
「まぁまぁ、無事、大和が、放免となったのですから、よしとしましょう。」
執事も、とりあえず、安心したような表情になっていた。
「それじゃ、帰るぞ。」
組長は、威勢よく、私と執事を見た。