わたしの名前は…



プルルルルル…





誰だこれ?

未登録番号…

しつこいくらい長い…

留守電に切り替わったのか
切れてはまた長く私を呼ぶ…




あ…
コウキ?



あんなに毎日電話してたのに、
番号なんか覚えていない。



でも、だとして、
出て何を話す?


事実は変わらない。

信じられないヒトの話を聞いて、
どうするんだよ…






「はい――」




…悲しいかな、
惚れた女の性ですか。

惚れたからキズ付いて、
キズ付くのは、惚れているからで…

卵が先か、鶏が先か…
みたいな―――

電話に出てしまう―――



「オレ。」


やっぱりコウキだった。


「オレって人は知りません」

「んなこと言うなよ…
悪かったよ。
振られるかと思って電話できなくて…」


電話したって、何を言う?

はっきり振られる前に私を振るか?


「いいじゃん。
する必要ないでしょ…」

じゃあ、出なきゃいいのは、私…


強がって、
喧嘩ごしでしかしゃべられない、
素直じゃない私…


「何よ。
好きな女ができたから別れようですか?」

「違うよ!
好きな女なんて、
サキに決まってんだろ!」


「そんなの信じられるワケない。
待つって言ったくせに!
他の女とヤッて、
病気もらって、
好きだなんて信じられるか!!!」


「お前を疑って、
嫌な思いさせて、
キズ付けて…
信じろって言っても無理だよな…」



無理―――

もう、ホントに私たちは
終わりなんだ…


無理だとか
言わないで…

もっと、何か…
何か言ってよ…




何でそんなにコウキを求めているのか、

何でそんなにコウキにこだわるのか、

何でそんなに


失いたくないのか―――



説明がつかない―――



それが
恋に落ちるということ…
だろうか………
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