わたしの名前は…
「だって…」
「だってじゃねーよ。
ちゃんと朝になったらオレ送ってくから。」
「でも…
ほんとに何にもしない?
もう、何されても拒否る力残ってないし…」
「しねーよ。でも、
イツキはいいのかよ?」
「だってイツキ先輩は何にもしないもん…」
「マジで?マジでお前らやってないの?」
「だから、
テレビショッピング観てるだけだって言ったじゃん…」
「マジで!?」
そういった瞬間、
私をグッと引き寄せ
抱き締めた…
「ごめん。マジで?!
あははは!マジで?!」
私から離れたコウキ先輩の顔は
何だか幸せそうに笑っていた。
「何にもしない、けど、
腕枕して寝てい?」
「何にもしないなら…」
どうせ確かに帰るアシもない。
朝にならなきゃ帰られない。
イツキ先輩の腕枕でただ寝るのも、
コウキ先輩の腕枕でただ寝るのも、
何だか同じ気がした…
その笑顔から
裏切りは想像できないと思えた…
「おいで。」
私はゆっくりとコウキ先輩の腕に寝てみた…
「はは!かわいい。」
酔っているからか
フニャフニャの笑顔で
私の首に回した手で私の頭を触る…
「イツキの女じゃないの?
オレの女になれば?」
顔が真剣になる…
「何で?したいから?」
「違うよ、かわいいから」
そう言って、照れたように笑った。
笑った顔のまま、
酔っ払いは、
私の答えを聞かないまま眠りに落ちていった…
「…いいよ――。」
私の返事は聞こえない。
眠る、コウキマンは
こうして
答えを知ることもなく、
私に手を出すこともなく、
気持ちよさそうに寝てしまった…