わたしの名前は…

その、眠る横顔を見たらなんだかとっても
この腕に守られている、
そんな気がしてきた…

この人に守られていたい、
そう思った。



本気で何もせず、
私を守るような格好で眠るコウキ先輩に

寝ていて、聞こえないのを承知で



「スキ…」


と、言ってみた。


なんだか私の柄にない
少女っぽいキモチだった…


これが、
コウキと私の'始まりの日,だった――。




でも、私は、まだ、
恋愛するのが恐かった…


まだ、ヒトをスキなる
それに落ちる
自信がなかった…。


聞こえてないから言った“スキ”は、
自分だけの世界で良かった

少し身体を起こし、
それでも起きないコウキ先輩に


「バイバイ…」

と、小さく告げ、
愛しい腕にキスをした


ケンカさせたら強い腕…

私を救い、
抱き締めた、
やさしい腕…

バイバイ…




少し明るくなりだした
遠い家までの距離を歩いて帰った…。

もうタクシーも動きだす。
でも歩きたかった…

一時間弱、
力を出し切った身体は
思いのほかふらふらで笑えた。

自分が、
思いのほか恋愛に臆病になってて笑えた。

人も車も電車も何にも通らない、静かな静かな道を
ふらふらの足で一時間弱、
何を考えて戻ったか
まったく覚えてない…。



ただ、私は笑っていた。


まるで酔っ払いのように笑って、


「バーイ、バイ!」


と叫んでいた、

それしか記憶にない……。
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