わたしの名前は…




鼻歌をうたいながら
アパートに帰る途中だった

「子猫ちゃん!
迷子なら、乗ってかない?!」

白いワンボックスカーが
ゆっくり私の横につける。


いかにも遊んでますな華奢な男…

(趣味じゃねーよ…)



無視して歩き続けた。


「ねぇ、無視しないでよ。
ドライブするだけ!
今日来たばっかなの、
新車!乗ってよ。」

しつこく
私の歩くペースでついて来る…


(しつこいなぁ…)


もうアパート。
家がバレたらやばいかも…


「わかったよ…
ドライブするだけでしょ。
今日中に帰してよ?!」

「ぃやったぁー!
うん、うん!約束する!!」


コノ人、ヒロト。

本当にただの車好き。

車を自分仕様に飾り、
愛する車で走ることが大好き…



「新車の助手席には
1番にかわいいこ、乗せてあげたかったんだ!
よかった!」

いわゆる走り屋…だった。


ヒロトは私をいろんなところへ連れていってくれた。

本当にただ、ただ、
私を乗せて走る。

それでヒロトは楽しいらしい…


別に害はない。

何度か出かけ、
私のアパートも覚えた。

ヒロトは
いつも突然やって来る。

アパートの玄関のカメラに思いっきり近づいて、
誰だかモニターで判らないようにして

「サキ、行こー!」

と…


「迷子にいっぱい路教えてあげるね。」

と、ちょっと、意味が違うけど、
とにかく害のないヒトだった…
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