わたしの名前は…

わざとゆっくり階段を降り、
ゆっくりとアパートを出る



コウキ以外に
私は手に入らないんだ。


強気の落ち着いた表情で
出た先に見えたモノ―――



私は一瞬
驚いた顔をしてしまう――



ユウキが
余裕の表情で立ち、
助手席のドアを開けたその車は…



(コウキと同じ…)


聞き慣れたエンジン音、
色まで同じ…


「どうぞ、姫。」

余裕の笑顔をされ、
ハッとして顔を戻す

「姫はキモイ。サキでいい。」



私が助手席に乗ると
また余裕の笑顔で、

「久しぶり、サキ。」

そう言ってユウキはドアを閉めた。


運転席に乗ったユウキは、
私の顔を笑顔で少しの間見て、
車を走らせだした…


「どっか行きたい?
ご飯食べた?」

「別に行きたいとこなんかない。
ご飯は食べてないけど
食べなくていい。」

「何でご飯食べないの?
ダイエット?
それ以上痩せたら
せっかく可愛いのが台無しじゃん?」

「ダイエットじゃないよ。
食べたくないだけ。」

「…ふーん。
俺腹減ってんだよね。
じゃあ、付き合ってよ、
食わなくていいから。」

「何であんたが食べるの
サキが見てなきゃいけないの!?」

「じゃあ 食べればいいじゃん。
決まり、食い行こ!!」

「な!―――」



勝手な奴だ!
食べたくないって言ってんじゃん!!

聞いたくせに
ハナっから食事に行く気満々じゃん!



まぁ、
いきなりホテルに誘うバカじゃないだけいっか…



時間稼いで
今日が終わりそうになればバイバイだし…

そんなカンジで
私はユウキの夕食に付き合うことにした。
が―――
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