わたしの名前は…
ユウキは食べ終わるとすぐに会計を済ませ、
「行こ、サキ。
いいもの見せてあげる!」
私の手を握り、
幸せそうな顔をして店を出た。
車に乗り、
エンジンをかけ、
ユウキはタバコに火を点けた…
聞き慣れたエンジン音…
懐かしい香………
「ねぇ、それ…」
「ん?
あっ!タバコ嫌い?」
タバコを急いで消そうとするユウキの手をつかんだ…
「サキ?
あぶないよ?
火傷するよ?」
「あ…
いいの…消さないで…
タバコ嫌いだけど
それは…いい…」
「…彼氏と…同じ?
好きなんだな、ホントに…」
「―――うん。
みんな同じ…。
車も、タバコも…
名前まで似てる…」
「彼氏のこと…考えてる?
悪いことしてると思ってる?…」
「うん…
私、コウキを愛してる…
だから、ユウキを試す必要…
ない…」
「コウキ…
マジ似てるし…」
タバコを吸いながら
前を見て苦笑するユウキ…
そして静かにユウキは言った…
「いいんだよ…
彼氏のこと考えてても、
彼氏が1番でも…」
タバコを消して、
私の顔を大きな手でやさしく包むようにして
「笑って…
サキはオレが初めて見た時みたいに笑ってればいい。」
顔を触られているだけなのに、まるで…
温かで大きな、
コウキと同じ香のする手で全てを抱き抱えられているかのような
温かなキモチになった…