わたしの名前は…






静かな部屋―――。

自分の心臓の音が聞こえそうなくらい…



…どうする?
逢う?
また、傷付くかもよ?



…逢いたい、
触れたい…
キスしたい…
抱き締めてほしい…

――スキ………

電話が切れて間もなく
車が家の前で止まる音がする――


コウキ先輩…

急いでお出かけグッズを持って、階段をおりる

早く、早く…



玄関を出た先には私を待つ車…

車の後部座席には
道案内にイツキ先輩もいた…

急いで出てきたことが急に恥ずかしくなり
車の横で立ち止まる…


イツキ先輩は
微笑んでから、顔を背けた…

助手席の窓が開き

「乗れ」

と、コウキ先輩が言う

私は助手席のドアを開けた

もう迷うことはない、
もう引き返さない。



助手席に乗ると
コウキ先輩はやさしく微笑み、車を走らせた…


何も、誰も会話せず…

静かだったらバレそうな心臓の音を消す、
車内の音楽に感謝…

車で5分の距離…
歩いたら一時間かかった
あの距離…


コウキ先輩の家に着いた

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