わたしの名前は…
値段は秘密…
でも、
ちゃんと買ってくれたよ。
その指輪が、
初めてで、
最後のコウキからのプレゼントだった―――
欲しいのなんか、なかったんだもん…
「こんなんでいいのかよ?
オレのボーナス、馬鹿にしてんだろお前!」
そう言いながら、
でも買ってやってるのがうれしいんでしょ?
みたいな顔をして
誇らしげにお金を払うコウキ…
愛されてるんだろう、
私、
一般的に…
プラチナの、小さなダイヤのリング。
かわいいデザイン。
高くはないけど、安くはない。
ダイヤのカットもすごくきれい…
「ありがと。コウキ!」
「おう。
やってよ、それ。」
「え?今?」
「当たり前だろ。
するために買ったんだろ!
左で合わせたから婚約指輪?」
「コレ?」
「本当のときはもっといいの買うよ、
冗談だろ、バカ。
右も左も薬指なら同じだろ?」
私の右手をつかみ、
指輪を外さんばかりのコウキ――
(ダメ!!!)
「もったいないから、まだやらない。
やったらプラチナだからすぐキズ付いちゃうし…」
ユウキがしてくれた指輪、
外すなら自分で…
外したくない…
私はコウキに造り笑顔をし
静かに右手を後ろに隠した…
「…そうなんだ。
プラチナってキズ付きやすいの?
だったらダイヤだけの買わなきゃだろ!
それはさすがにオレ買えねーぞ?(笑)」
「そんなの普通に売ってないって!」
「だな(笑)。
まぁ、
大事にしてくれんのはうれしいけどな!」
頭をなでるコウキの手…
ごめんね、コウキ…
ちゃんと外すから…
ちゃんと、
自分で自分のけり、
つけるから…
自分で選んだ路の…
もう少しだけ、
もう少しだけ、
待っていてください―――