わたしの名前は…

「じゃあ、
もう12週だから、
できるだけ早く母子手帳もらって、
次は持ってきて下さい。」

「はい。」



私がココへ何をしにきたか看護師は知らない。




おめでとうございます――


妊娠したら、
普通はおめでたいんだ…




妊娠、出産に伴う手続きなど、
笑顔で話す看護師…

その時の私には、
それが当たり前で、
何の違和感もなく…

ただ教えられることに

「はい。」

と、答えていた…



産む以外に、
全く考えはなかった。




それを母は何も言わず見守っていた…





家に戻り、
車を降りるとき
やっと母は口を開いた。



「母子手帳は、
自分で貰いに行きなさい。
産むならもっと強くならなきゃ。
親になるって簡単なことじゃないよ。
それと…
ちゃんと食べないと…」

そう言って車を降りた。


この子のために、
ちゃんと食べないと…ね…

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