わたしの名前は…





「サキ?何やってんの?」

大きなバックに
下着やバスタオルなど、
お産に備えて詰め込んでいた…


「家出の準備。」

「やめろよ、そういう冗談…」



お産前のある日の会話…




いつコウキに捨てられてもこの子を産む。

強がりの意地っ張り。

私はコウキに何をしているか教えなかった…

なのに――




何をしろとも言わず、
ただ助けてって、
早く来てっていうあの電話だけで…

コウキは私があの状況で、
親に連絡していないこと、
印鑑が必要なこと、
私が詰めていたものが何か独りで考え、判断し…





(完璧だよ…コウキ…)



「ありがとう…コウキ…」





まだ麻酔で頭がボォーッとしていて、
私はまた眠った―――




次の日には
元気な我が子は、
保育器から出された――

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