わたしの名前は…
裁判を間近に控えたある日…
コウキが飲みに行って
帰らなくなってから、
すでに1年以上経っていた…
仕事帰り買い物をして
いつもと違うコースを帰る途中だった。
あるパチンコ店の前を通ったとき―――
コウキの車を見つけた。
「この状況でもパチンコかぁ…」
パチンコしているコウキの顔は
いつも楽しそうで、
嫌いじゃなかった…
出ると私に玉をくれて…
なんにも分からない私のほうが出たりして…
「お前隣にいると、すげぇ出るんだよなぁ!」
あの頃はこんなふうになるなんて考えもせず、
2人とも笑ってたね…
早く気付いて、
早く止めてあげてたら…
あの笑顔を失わずに済んだかもしれないのに…
誰ももう止めないんだ…
一生治らないんだ…
借金だらけで…
いつか親がいなくなったとき、コウキは…
始めから別れたくて、
こうなりたくて
コウキを選んだんじゃない
別れたくて別れるんじゃない…
コウキだって犠牲者だ…
あの親たちの犠牲者なんだ…
私はカナムを私たち大人の犠牲にしたくない。
だから、
もう終わりにするけど、
コウキを本気で嫌いなんかじゃない…
楽しかった頃のあの笑顔―――