わたしの名前は…
「結婚…
私達としては、
結婚したいと思ってもらうのは、
すごく、うれしいよ…
でもね…」
ジッと下を向く父の心を代弁するように、
母が切り出す―――
「解って言ってくれてると思うけど、
娘はバツイチ・コブ付き。
何にもなくても苦労するよ?ヒトシ君。」
「解ってます。
それでも、それでこそ、
僕は、サキさんが…
サキさんとカナム君が、好きなんです。」
親を前に、恥ずかしいほどストレートなヒトシの言葉…
父が顔を上げ、
ヒトシの眼をジッと見る…
ヒトシの眼は、
真直ぐで一点の曇りもなく
見たことのあるような…
きれいな瞳で―――
私はまるで他人事のように
ヒトシの瞳に、吸い込まれるように
ただヒトシの瞳を眺めていた―――
私には、その瞳だけで、
この人に、
この人の言葉に、
何も疑う理由がなかった…
それは、
父にも、母にも、
伝わったはず―――