わたしの名前は…




「あなたの気持ちに、
正直私は負けた…
ただ、
私があなたの親なら、
もっと普通な結婚をしてもらいたい―――」



ついに母が本音を漏らしだす…



「この子は決して幸せな結婚をしていない。
娘に幸せになってほしい。
孫に幸せになってほしい。
でも、
そこまでこの子達を想ってくれている
あなたにも…
幸せになって…もらいたい…」



そう言うと
母の目から
涙がこぼれ落ちた…


そして父が
やっと口を開いた…




「諦めてくれないか…
親はみんな我が子が1番幸せになってほしい。
それは、私たちも、
君のご両親も、同じだ…」



「解ってます。
生意気言ってすみません。
でも、俺はまだ親じゃないけど、 解ります…」




そう声を高くして、
正座をしなおしてヒトシは言った。


「俺は今、サキさんと、
そしてカナム君に
1番に幸せになってもらいたいから!
だから解ります!」



もうこの時すでに、
ヒトシはカナムの父親だった…

もうすでに…
そこまでヒトシはすべてを吸収していた…





「君は…
すごいな…」



父はまた下を向き…

そして

微笑んでいた…



「歳をとってなお、君に憧れるよ…
君のような人間に…
娘と…孫に…
出逢ってくれて
本当にありがとう…」






父の、最大級の、

ゴーサインだった―――


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