わたしの名前は…
「おう!サキちゃん♪」
…酔ってるよ。
「もう眠いから、
電話しちゃった」
「おー!寝ろ寝ろ学生!」
その時だった
「コウキさん
早く戻ってきてぇ!!」
と、ハイテンションな女の声―――
「静かにしろバカ!
今女と話してんだから!」
と、ナルセ先輩の声が
電話の向こうから聞こえる―――
「何の飲み会?
何で女いるの?」
すっかり眠気が吹っ飛んだ。
「野球。野球の飲み会!
マネジャー、ヤスの女。
心配しないでぇ♪
コウキはサキだけ
大好きだよ〜!!!」
嘘かどうか
どうでもいい…
それが本当だって
コウキが他の女といて
楽しんでいる。
その事実は、
そばに行きたいのに行くことのできない私には
めちゃくちゃキツイ――
心が狭いですか?
そうじゃない。
心に余裕がないんです…
コウキに
簡単に会える女に
嫉妬…
自分が選んだみち…
だからしょうがない………
こころにもないことを自分に言いきかせた――
ただ、
それから二度と
私はコウキの携帯を鳴らさなかった…
コウキの声を聞きたい電話で
女の声を聞きたくない。
些細なことが
トラウマとなる遠恋の魔法
家に電話して、
コウキがいないときは
ただコウキからの電話を待つ
メールも電話も
コウキの隣に女がいて、
それを嘲笑っていたら――
あるかもないかもわからない想像…
でも、そう考えると
そうだったら惨め…
だから、声を聞く一番の方法なのに
携帯に電話できなくなった