耳のない男
──赤ん坊のまわりで、次々と人が死んでいったそうです。しかも若い男ばかり、ね。
黒い瞳が艶を含んで光ったような気がした。
──まさか。偶然だろ?
──さあ。
にっこりと、明らかに作り物の笑顔。
──その赤ん坊には、海の神が憑いたんだと皆言ってました。それで次々と若い男を喰らっているんだと。
一年ごとに誰かが死ぬんですよ。
そう言った男は、店の壁に掛けてあるカレンダーにさりげなく目をやった。
──今日がその日ですね。
その瞬間だった。
私の目に映る男の顔が、一瞬だけ見も知らぬ女の顔に変わった。
──……!!馬鹿な!