耳のない男
そう呟いた次の瞬間には、彼の顔は元の無表情な男のそれに戻っており、私の頭は混乱した。
頭をかきむしる。
──どうかしましたか?
何もなかったかのように問い掛けてくる男。その顔を私はまじまじと見た。が、何度見直してもそれは変わらない。
──いや……。なにもないよ。
額に浮かんだ汗を、手の甲で拭いながら、それでも気になっていたことを私は口にした。
──それはいつのことだい?村が消えたのは。
──25年ほど前でしょうか。
男はさらりと答える。私はもう一つ問う。
──キミは……いくつだい?
──……今年で。今日で、25になります。