耳のない男
挽肉に、塩と胡椒、酒を混ぜ合わせ、更にそれを小さな団子状に丸めながら、男は再び口を開く。
──一人だけ、助かったんです。
──へぇ……、それはまた。幸運というべきか、不幸と言うべきか。
たった一人だけ助かるというのもどうだろう、と私は考える。
家族を皆奪われて、自分一人生き残るなんて。
──小さな赤ん坊だったそうですよ。
──え?
──生き残ったのは、まだ一つにもならない男の赤ん坊だったそうです。
男は器用な手つきで、どんどん団子を作っていく。
ユッケはとても美味かった。コチュジャンがいい具合に効いていて、酒が進んだ。