耳のない男


挽肉に、塩と胡椒、酒を混ぜ合わせ、更にそれを小さな団子状に丸めながら、男は再び口を開く。


──一人だけ、助かったんです。


──へぇ……、それはまた。幸運というべきか、不幸と言うべきか。


たった一人だけ助かるというのもどうだろう、と私は考える。


家族を皆奪われて、自分一人生き残るなんて。


──小さな赤ん坊だったそうですよ。


──え?


──生き残ったのは、まだ一つにもならない男の赤ん坊だったそうです。


男は器用な手つきで、どんどん団子を作っていく。


ユッケはとても美味かった。コチュジャンがいい具合に効いていて、酒が進んだ。




< 9 / 14 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop