哀歌 <短>
哀歌




天国もない。

地獄もない


ヒトは死んだら、ただ消えるだけ。



だから、生きてるうちに何をしたって構わない。


どうせ、最期に行き着く場所は、ミンナ同じなんだから――



いつか得意気にそう言っていた私の恋人は、

その言葉通り、世の中に散々迷惑をかけて、消えていった。



ちょうど、木々たちがその体を紅に染める季節で、

なぜだか、あのヒトの終末に、なんて似合った季節なんだと思った。



季節の情緒とかいうものを、全く解さない私でも、

秋は趣深い季節だと語り継がれる理由が、なんとなくわかった気がした日。


まぁきっと、本当の意味は違うんだろうけど。




――ねぇ。


それならば、アナタという存在は、もうどこにも……


どこを探そうとも、いないんですね――




だけど

最後にひとつだけ……


ひとつだけ、教えて欲しいことがあります。



アナタ以外に私が、この世界に求めるものは……

一体、何なのでしょうか――


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