哀歌 <短>
もう駄目だ。
訳がわからなくなる。
――何もかも。
あの日から、少しずつ色褪せていった景色。
失っていく色を、私はもう、自分の手で止められない。
私が望むものは、アナタ以外に何があるんだろう?
あの頃から、私が必要だったものは、アナタの他に何があったというのだろう?
そんな簡単な問題……
いつだって、答えはすぐ傍にあったのに。
今でもまだ、消せないままでいる、悠真の名前を残す携帯のメモリー。
何度も反芻しすぎて、もう空で言えるようになった、決して繋がらない電話番号。
笑えるくらいクサイ、受信メール。
最高の笑顔で笑うアナタと、引きつって笑う私の待ち受け。
いつのまにか身に付いた、星の輝かない狭い夜空を見上げて、
いるはずのないアナタの姿を探す癖も……
全部、全部全部、
どうしようもなくらいに、悠真を想ってた証だって、
想ってるんだって……
本当は、痛いほどわかってたのに。