すみれ
「藍ちゃーん? お父さんもう出るわよー?」

一階から母親の声が響く。

僕の家庭には、父親が出勤するときには僕と母親で揃って見送るという“習わし”があるのだ。

二人で「行ってらっしゃい」と声をかけると、父親は息子の頭をポンと軽く叩き、そして妻にキスをするのだ。

何に影響されたのか知らないが、両親はこの異様な儀式を笑顔で、なんとなく得意気にこなすのである。

そして、今日もこれからその儀式が行われる予定なのだ。

・・・もっとも、何気なくこれを友達に話した小学5年生の時までは、僕もそれが異様であることに気づかずに生きてきてしまったわけで。

危うく、自分が大人になった時に同じ過ちを繰り返してしまうところだった。

まぁ、数十年後の僕が結婚しているとは到底思えないのだが。
< 6 / 6 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

ガソリンスタンド
JAM/著

総文字数/4,458

その他35ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop