名も無き花
「きみ、言葉わかる?」

きみ?

人間として扱うのが正しいかは、迷うところだ。


『それ』は、即座に頷いた。
驚くべき反応だ。

五感がある、言語が理解できる。



大きさと、根と、頭の花を除けば、人間と変わらない。


『それ』は、地面に指でなにか書き始めた。


『わたしに、なにかようですか?』


ひらがなオンリーだが、しっかり読める文字だ。

会話もできるだけの知識があるらしい。


呼吸もしているように見える。

「ここ、俺の家の庭なんだ。」

だからどうしろと言うわけではない。

「きみは、何処からきたのかな?」

一番気になる事。


沈黙。


『それ』は、さっきの文をけしてその上に、また文字を書き始めた。


『それが…わからないんです』
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