名も無き花
「通は味噌ラーメンなんだから」

水谷さんが自慢気に切り出す。

「あいにく俺は、通じゃないからなぁ」

お絞りで手を拭きながら返す。
ふと目を奪う、白いお絞りに吸い込まれて行く綺麗な指先。馬鹿みたいに、その程度のしぐさに視線を独占された。

「ん?」

俺の視線に気付いたのか、疑問符を投げ掛けながらしたから俺の顔を覗き込んできた。

「どうかした?」

「いや、別に」

あわてて視線をずらした。

「変なのー」


無邪気な笑い声が、鼓膜にまとわりつく。照れくさいと同時に心地よい事この上ない。

周りから見たら自分たちはカップルに見えるのだろうかと思った。
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