名も無き花
それはそれで張り合いがなくてつまんない。

今度は、隣りにちょこんと座ってみせた。

ウサギは変わりなく花を見つめている。

………。早く書き始めないなぁ…ケータイ小説。

ウサギのケータイが目に入った瞬間、別に読書が好きなわけでもないけれど、どうしようもなく、読みたい衝動に襲われた。

あたしは早く読みたいの!

声に出したら逃げちゃいそうだから心の中で叫んだ。



苛々しているあたしをなだめる様に、どこからか風が吹いてくる。

風は優しくあたしの頭を撫でる。髪をさらわれる感じがなんとも心地よい。

不思議と、その感覚にいつまでも身をゆだねていたい気分になってくる。

そんな気分に気を取られていると、風に乗ってカチカチと言う音が耳になだれ込んできた。

始まった!
< 3 / 141 >

この作品をシェア

pagetop