名も無き花
気付いたら、黒髪ストレートでセミロングの女の子と一緒に歩いていた。

正確には、放課後デートをしている。結論から言おう。

本能を抑制することは不可能だ。

「神田さん、あそこ入ってもいいですか?」

「ん?」

彼女の視線の先には、喫茶店。

「私、喉かわいちゃって」

そう言って、小さく舌を出した。

「良いよ良いよ、じゃあ行こうか」

しかし、カワイィ…。

先に歩きだした彼女が戻ってきた。

「神田さん、早く」

弾んだ声が耳に届くと同時に、手首をつかまれた。

俺は引かれるがままに、喫茶店の中へ流れていった。
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