名も無き花
目が慣れないと、何処を歩いているか分からない道は、何年歩いても慣れるものではない。
たまに、わきの林に迷い込みそうになる。
疲れているせいか、いつもより足が重い。あと数分なのだが、視界に家が入らないほど暗いせいでたどり着ける気がしない。
鳥の飛び立つ音が、風の通り抜ける音が、木の葉のこすれる音が、暗闇と共鳴して恐怖心をかき立てる。
これは、慣れた。子供のころは確かに怖かったが、年と共に恐怖は薄れた。
慣れとは恐ろしい…。
…歩く事5分
着いた。
真っ暗の我が家。庭と玄関はライトがついている。
さすがに全ての照明をオフにしたら家の場所さえわからなくなりそうだから外灯はつけるのが習慣だ。
「ん?」
歩みを止めた。
景色に違和感を覚えた。
庭の照明を浴びて、この世のモノとは思えないモノが…はえてる?転がってる?
どっちの表現が適切か定かではないが、言うなら
『それ』は、はえている
『それ』との出会いは転がっていた。