名も無き花
ケータイの目覚ましが朝の部屋に響き渡る。

スヌーズ4回目

オフボタンを押した。

取りあえず起き上がる。そのままのかっこうで部屋を出る。

隣りの部屋に入った。
SDプレイヤーからイヤホンを外して再生。音域が一番広くてアップテンポの曲がいい。

音を最大にしたら、イヤホンをベッドの中で寝ている姉の耳に装着。

ドアを開けて逃げ道を確保したら、プレイヤーとイヤホンを……………接続。

「!?」

すかさず姉の両耳を押さえる。

もがく姉の姿を見るのは軽く快感だ。

睡眠状態から双眼を見開いた瞬間がなんとも言えない。

「い…いい加減に!」

姉が頭を下げるまでやめない。いつもの事なので姉の限界を知っている。

姉の限界はこの曲のラスト30秒。

なぜなら次の曲は最強のロック。普通に聞く時もほかの曲より2段階くらい音量を押さえないと耐えられないくらいだ。

そして姉も分かっている、今流れている曲の後の地獄を…。

姉の顔が熱を帯びてきた。そろそろかな?

「お願いゆうき、助けて!!ね。お願いよぉ」

半泣きで、命乞いするかのように叫び出した。
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